花咲く原石
あの領地に行った者の末路は口に出来たものではない。

良からぬ話ばかりが囁かれる魔の領域へは否応なしにいかねばならないのだ。

周りから永遠の別れに近い餞別を貰って過ごす日々はどうしようもなく暗い気持ちにさせる。

しかし仕事だ、選ぶことは出来ない。

諦めと覚悟を決めて、数人の同僚と共にかの地に赴いた。

そして軽い説明を受けた後に言い渡されたのだ。


“お前の仕事は捕虜の監視”なのだと。


てっきり牢獄にでも張り付けになるのかと思いきやそうではなかった。

公爵領の外れに位置する緑豊かな山の中にその監視場所はあった。

小さな山小屋、少し離れた場所にも響く金物を叩く音。

そこにいたのが、ダイドンと未だ幼いシイラだ。

ここが本当に捕虜の住み処なのか?

疑問符ばかりが頭の中に浮かんでくる。

とりあえず“新しい弟子”と告げて近付くようにと言われていたので言う通りに実行した。



< 163 / 200 >

この作品をシェア

pagetop