花咲く原石
ダイドンは寂しそうな笑みを浮かべて軽く頭を下げる。

そしてそのまま彼の作業場であろう椅子に腰掛けて工具を触り始めた。

シイラも彼の傍に駆け寄り邪魔しないように手伝いを始める。

これが彼らの日常なのか、そう悟ったオーハルは不思議と身体の力が抜けた気がした。

穏やかな空間だ。

今日からはここで、弟子という皮を被って彼らを監視しなければいけない。

「そんなもの…必要なのか?」

部屋の中を見渡しながらオーハルは呟いた。

この穏やかな空気をもつ親子に監視役なんて何故必要なのだろう。

こんな場所に特別に小屋を設けて、それも不思議に思ったが、ドワーフはある程度の環境がないと最高の物が造れないと聞かされていた。

それは彼の作品を見て十分に納得できる。

あそこまでの代物を造り上げるならば、彼にとって最高の場所を提供し最高の物を差し出して貰った方がいい。

本当は公爵もすぐ手元に置いておきたいに違いないだろうが我慢しているのだ。



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