花咲く原石
我慢なんて出来そうにない公爵が、それでもこうして特別扱いをしているのは余程気に入っているのだろうと思っていた。

きっと傲慢な貴族のプライドから“捕虜”などという言い方をするのだろうと。

“監視役”だなんて嫌な言い方をしてまで彼らを手放さないようにしているのだと思っていた。

なんて楽観視していた自分を今となっては責めたくもなる。

彼らが自分の意思に関係なく拘束されている、そのことを知るまでは何も考えなかったのだ。


ある日、オーハルの耳に入ってきたのは公爵同士の会話だった。


「無理やり捕らえてきたドワーフの調子はどうだ?」

もっと砕いたような、冗談ぽく会話をしていたような気がする。

それをオーハルの中で整理した言葉にすると、このように聞こえたのだ。

頭を鈍器で殴られたような衝撃。

そもそも黒い噂がまとう公爵だ。

何故そこで気付かなかったのだろう。

あの親子の穏やかな雰囲気に安心していたからだろうか。



< 170 / 200 >

この作品をシェア

pagetop