花咲く原石
両脇を拘束され手負いだったが、既にリトの仲間によって解き放たれて手当てを受けているところだった。

彼の足元に抜かれた矢が転がっている。

その物体を視界に入れてリトは目を細めた。

しかしそれも僅かな間だけ、すぐに視線をオーハルに戻して彼の様子を探る。

オーハルもまたシイラ同様に戸惑っているようだったが、もうこの状況を受け入れているようにも見えた。

リトがそう思えたのは、オーハルがどこか安心したような雰囲気を持っていたからだ。

少なくとも昨晩のような殺伐とした空気はない。

その姿に少し安堵したリトは密かにため息を漏らした。

余計な時間も気も遣わなくてすみそうだ。

「オーハル殿。」

リトは何の感情も含まずに彼の名を呼んだ。

その声に誘われて彼は顔を上げる。

オーハルと目が合ったのを確認すると彼のもとへ足を進めた。

「動けますか?」

座り込んで手当てを受けているオーハルに問いかけた。



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