花咲く原石
今でこそ穏やかだが、いつ刄をむくとも限らない狼に囲まれているようだ。

場の空気が曇りかけている。

その事に気付きオーハルは少し焦りを感じた。

どうすればシイラを守り抜けるのかを必死で導きだそうと思考を廻らせる。

オーハルの緊張は周りに伝わった。

心配そうに見つめるシイラが目の端に映っても、気まずさから目を合わせることが出来ない。

「我々はあなた方に危害を加えるつもりはない。その証拠に荷物は手元にあるし、手も足も自由な筈だ。これで信じてもらえないだろうか?」

「ならばこの見張りの人数は?」

「殺気を向けられている私を守る為ですね。」

余裕の笑みを浮かべるリトに対し、オーハルは厳しい表情のまま何も答えなかった。

彼の言うことはもっともだ。

しかし隠しきれない疑惑が敵意を示してしまう。

信じていいのか。

ただ強い眼差しでリトの中を探るしか出来ない。

「オーハル。」

諭すようにシイラが呼んだ。



< 92 / 200 >

この作品をシェア

pagetop