花咲く原石
促され、渋い顔でオーハルは顔を向ける。

「オーハル。」

大丈夫、そんな表情でシイラは微笑んでいた。

信じようと目で訴えているのが伝わってくる。

どこまでも純粋で真っすぐな瞳にオーハルが白旗を振るのも時間の問題だった。

昔から変わらない強い眼差し、これに逆らえた試しなど一度もない。

降参間近だと分かっているのかシイラの瞳はオーハルから決して逸らさなかった。

それはもうトドメだ。

「…はぁ。」

諦めのため息を吐いてリトと向き合う。

それでも、もう一度リトの目の奥の真実を探った。

リトはそれを真正面から受け止めた。

逸らさない瞳、その眼差しにはシイラのような力がある。

それに気付くとやはり悔しい気持ちが出てしまった。

でも今はそんな感情に乱されている時ではない。

「…申し訳なかった。」

雑念を振り払った反省の気持ちはそのまま声色に出ていた。



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