嘘つきな君からのキス
放課後の人通りの少ない廊下にて。
朱に呼び出してもらった相手の黒い目がじっと私を見つめている。
たったそれだけでシドロモドロになってしまい、無意味に愛想笑い。
こんな風に男の子と面と向かわないから緊張……して……
「話って?」
「ひゃわ!?え、えーっと……」
「うん?」
不思議そうに相手は首を傾げる。
悪いとは思うけれどこればかりは気持ちの問題だ。
私は目を瞑って、さっきまでとは一変して一思いに言葉を吐き出した。
「つ、付き合うとかの話は無かったことにしてほしいの、です!」
変な日本語になりながらも言い、まずは片目だけを開いた。