バット・インソムニア
しかし少年はバットを振りかざすでもなく、距離を詰めてくるわけでもなく、ただ顔の位置が低くなって縮んでいく。

いや、縮んでいるのではない。

ずぶずぶと地面に沈んでいるのだ。

脚、腰、胴、首とずぶりずぶりずずぶぶり。

少年の頭の天辺が見えなくなったところでようやく肩の力が脚の先から抜けていき、地面にへたりこんだ。

それからどれほど時間が経ったのか。

とても長いような気もするし、一瞬だった気もする。

とにかく目の前の恐怖から解放された脱力感でいっぱいだった爽夏には分からなかった。

突然、腕時計がジャリジャリと騒ぎだし肩を跳ねあげるともう辺りの暗闇はなかった。
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