ふたり。-Triangle Love の果てに
私が6歳。
お兄ちゃんが13歳。
寂れた港町の丘の上の施設に、私たちは預けられた。
それが「なつみ園」。
下は5歳から上は16歳までの子ども10人が、いろいろな事情を抱えて、そこで生活していた。
そのなつみ園の隣には小さな教会があった。
毎週日曜日には礼拝があって、私たち入所している子どもたちもお祈りを捧げることになっていた。
天宮(あまみや)先生というなつみ園の施設長が、その教会の神父さまでもあったからだ。
でも礼拝に訪れる人は、なつみ園の子どもと町の人、数人。
小さな教会なのに、いつも中はがらんとしていて広く感じられた。
しかも、いつも礼拝に出ない14歳の少年がいた。
それが相原泰輔。
年下からは「泰兄(たいにぃ)」と呼ばれていた。
ここでは年上に対して名前の後に「兄(にぃ)」「姉(ねぇ)」をつけて呼ぶ。
私のお兄ちゃんは勇作だから「勇作兄」とか「勇兄」って呼ばれていた。
その泰兄はいつもひとりで、施設や教会の行事には決して参加しようとはしなかった。
天宮先生もそのことで彼を咎めることはなかったし、他の子どもたちもとっつきにくいと泰兄を敬遠していたので、誰も気にはしていなかった。
私をのぞいては。
「泰兄はいつもひとりで何をやってるんだろう」とお祈りの最中にふと思って、教会の小さな窓から背伸びをしてのぞいたことがある。
彼は中庭の大きな樫の木に登って、眼下に広がる海を見ていた。
その日だけじゃない。
夏でも、冬でも。
雨の日でも、雪の日でも。
身動きせずに、ただ海をじっと見ていた。
今思えばその背中がとても寂しそうだったのに、幼い私は「きっとおもしろいことがあるんだ、すっごくきれいなものが見えるんだ」そう思って、ある日の夕方、大人の目を盗んでその木によじ登った。
ゴツゴツとした節があったので、足をそこにかけると意外に簡単に登ることができた。
あっという間に、彼がいつも腰かけている太い枝までたどりついた。