ふたり。-Triangle Love の果てに
「わあぁ…」
初めて見る景色。
オレンジとも赤とも言えぬ眩しい光を放ちながら、太陽が海へと沈んでゆく。
それに染まった海は波立つたびにキラキラ反射して、まるで宝石箱のようだった。
ああ、あの人はいつもこの景色を見てたんだ。
だからどんな日もここにいるんだ。
妙に納得して、私は完全に日が沈むまで見とれていた。
余韻に浸りながら、ポツポツと散らばる船の明かりを数えたりなんかしていた。
そうだ、お兄ちゃんにも教えてあげよう。
きっと喜んでくれる。
でも私はそこで初めて辺りが真っ暗なことに気付いた。
登るのは簡単でも、降りるのはその何倍も難しい。
それに、今自分がどのくらいの高さにいるのかさえも、全く見当がつかなくなっていた。
急に心細くなり、施設の宿舎を見る。
窓という窓から光が漏れて、みんなのはしゃぎ声が途切れ途切れに耳に届く。
きっと私のことなんて忘れてる、そんな感じ。
「お兄ちゃん…お兄ちゃん」
到底届くわけもない小さな声をあげながら、私はしくしくと泣き出した。
真っ暗な中で、風が葉をざわめかす。
それが何よりも怖かった。
昔読んだ絵本を思い出す。
森に迷い込んだ女の子が、木のおばけに追いかけられる話。
「怖いよぅ…お兄ちゃん」
やがて私がいないことに気付いたのか宿舎が慌ただしくなり、天宮先生をはじめ、職員が私の名を呼びながら外に出てきた。
ここだよ、そう叫ぼうとして、ふとある考えが頭をもたげた。
「こんな危ないことをして」って、きっとすごく怒られる。
一瞬にして暗闇の恐怖よりも、怒られる恐怖の方が勝る。
私は生い茂る葉に隠れるように、太い幹に抱きついた。
「真琴ー!!」
何度も私を呼ぶお兄ちゃんの声がしたけれど、ただそれを聞いてるしかなかった。