ふたり。-Triangle Love の果てに
「降ろしてください」
運転席の男に向かって行った。
だが、そいつは俺の声がまるで聞こえていないかのように、無言でハンドルを握り続けている。
「止めろって言ってんだよ!」
「相原」
「何だよっ」
苛ついた俺の声とは対照的に、オーナーは静かに言った。
「免許を取ったら、俺の運転手をしろ」
「はぁ?ますますワケがわかんねぇ」
「今までおまえの仕事ぶりは見せてもらっていた。実に手際がいい」
「あんな単純作業で褒められても、ちっとも嬉しくねぇよ」
「単純で簡単だからこそ普通の人間は手を抜く、トロトロ動く、時間を無駄にする。だが、おまえにはそれがない」
彼の目が光った。
あまりの光の鋭さに、俺は何も言えなくなって唾をごくりと飲み込んだ。
「とりあえず免許を取ってこい。その後どうするかは、おまえが決めればいい」
車が止まった。
「あの…どうして俺なんですか?」
金の入った封筒を恐る恐る手に取ると、俺はオーナーの横顔を凝視した。
鼻筋の通った、知的な顔立ち。
「どうして?さぁな、どうしてかな、俺にもよくわからん。ただおまえを初めて見かけた時、ある人に似てると思った。だからかな」
オーナーは笑って、遠い目をした。
「ある人?」
そんな俺の質問を遮るように、「ほら、降りるんだろ。早くしろよ」と彼は外を指さした。
いや、確かにさっきそうは言ったけど…
俺は仕方なく車を降りた。
「その封筒に俺の連絡先が入ってる。2週間後、とりあえず連絡してこい」
パワーウィンドウが低い唸り声と共に閉まった。
走り去るクラウンのテールランプを見つめながら、俺は夢でも見てるような不思議な気持ちになっていた。
何がなんだか、さっぱりだ…
あのオーナーは一体何者なんだ。
威圧感を感じる中にも、どこかしら心惹かれる魅力がある。
しばらく佇んでいた俺は我に返って辺りを見回した。
「っていうか、ここどこだよ」