ふたり。-Triangle Love の果てに
泰輔は、背中に彫られた龍を隠すことはなかった。
タンクトップ一枚で平気で庭仕事をしていたり、時には子どもたちと海で泳いだりお風呂に一緒に入ったりした。
彼らも怖がるどころかむしろ珍しかったようで、泰輔は一躍なつみ園の人気者になった。
人気がある理由はそれだけじゃない。
彼は、自分の犯した罪を子ども達に包み隠さず話す。
ごまかしたりせずにありのままを。
「自分のやったことには、自分でケリをつけろ」が泰輔の信条。
その上で、子どもたちがやってしまったことに対して、「おまえはどう思う?」と問い、考えさせる。
決して急かさず、じっくりと彼らと向き合う。
怒る時は怒り、褒める時はとことん褒める。
そういう泰輔だからこそ子どもたちは信頼し、抱える様々な悩みを打ち明けるのだと思う。
「もう俺は思い残すことはないな。いつでも安心して死ねる」と天宮先生。
「何をおっしゃってるんですか。まだまだ彼に指導していただかないと」
「ははっ、泰輔にはもう教えることなんてないさ」
窓枠から手を離すと、先生は廊下の突き当たりの自室に向かった。
「真琴も無理するなよ。大事な身体なんだから。じゃ、おやすみ」
そう言って、先生は細い手を軽く振った。