ふたり。-Triangle Love の果てに


中庭に出ると、まだ3人はじゃれ合っては楽しそうに声を立てて笑っていた。


「おまら何もわかってないな。そもそも…」


泰輔が熱っぽく語るところへ、私が水を差すように割り込む。


「もうそのへんにして部屋に戻りなさい」


声をかけた私を見た途端、タケルとハルキがさらに声をあげて笑う。


「なーに?私の悪口でも言ってたの?」


わざとにらむように彼らを見る。


「違うって。なぁ、泰輔先生?」とハルキ。


「そうそう。真琴さんは口うるさいって言ってただけだよな、タケル?」


そう言って泰輔が噛み殺した笑いを浮かべる。


「うん、言ってた、言ってた」


「嘘つけっ!一言だって言ってねぇし!本当だよ、真琴さんっ」


焦るハルキに、泰輔とタケルが手を叩いて笑った。


「もういいから早く部屋に戻って。続きは明日ね」


「とか言って、俺たちを追い返して、今から泰輔先生とふたりでチューとかすんじゃないの?」


調子に乗ったタケルがニヤニヤする。


「何を言ってるの」


まったくこの年頃の子はこういう話が本当に好きね、と内心苦笑する。


そこに泰輔が何の恥ずかしげもなく言う。


「そうだ、今から大人の時間だ。だからおまえらさっさと戻れって。邪魔すんなよ」


ヒューッとひやかす二つの声。


「大人の時間って一体何すんだよ。天宮先生にチクろっかなー」


「勘弁してくれよ、ここを追い出されるだろ」


「じゃあ何するか教えてくれよ」


「仕方ないな」


泰輔は肩をすくめてから、ふたりに耳打ちをした。


「マジで!?」


甲高い声が中庭に響く。


「ほら、わかったなら部屋に入れ。くれぐれももう先に手を出すんじゃないぞ」


釘を刺す泰輔に「はあい」と声変わりを終えたばかりの、かすれた返事をしたふたり。


彼らが建物に帰っていくのを見届けてから、彼が言った。


「美月はもう寝たのか」


「ええ、あっという間に。夕方みんなに遊んでもらって疲れたみたい。最近は陽介くんがお気に入りなの、美月は。ずっと一緒にいるわ」


泰輔は微笑むと、少し困ったように鼻の頭をかいた。


「もしかして今から心配しているの?美月を陽介くんにとられちゃうかもって?」


そう言って噴き出す私に、否定しない彼。


私の笑いが止むのを待って、彼はそっと手を伸ばしてきた。
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