ふたり。-Triangle Love の果てに


やだ、泰輔ったら。


でもここで生活するようになって、彼がこんなに活き活きとした顔をするなんて知らなかった。


お金がなくても、地位や名誉がなくても、愛がある。


確かな深い愛がここにはある。


それが彼を変えた。


「キス!キス!キス!」


はやし立てるような、子どもたちの恥ずかしいリクエストの嵐。


顔の前で手を振り、「無理よ」と私は彼らに言った。


「もう入りましょ、泰輔」


なのに、突然唇に吸い付くような温かさが広がった。


ちょっ…ちょっと!


キャー!とか、ワァー!という声が町中に届きそう。


嘘、こんなみんなの前で…


でも泰輔の優しいキスを受け止めているうちに、私もそっと彼の首に腕を回した。


天宮先生、きっとカンカンね。


でもいい。


愛は言葉や態度に示さなきゃ伝わらないんだもの。


ああ、私は幸せのまっただ中にいる。


唇が離れ、見つめ合った私たち。


「さてと、天宮の説教でも聞きにいくか」


甘いキスの後に発せられた彼の一言に、思わず笑ってしまう。


「そうね、正座で1時間ってとこかしら」


「おまえは免除してもらえるだろ」


「じゃあ、あなたが私の分まで正座2時間ね」


お腹をさすりながら「あ、3時間かも。この子の分まで」と私が言うと、彼は「いくらでも引き受けるさ」と唇の端を持ち上げて笑った。


手を取り合ってなつみ園の宿舎へ、必要としてくれる人たちのもとへ、私たちふたりは向かう。

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