ふたり。-Triangle Love の果てに
「ここだ」
ふいに立ち止まった彼の視線の先には、小さな定食屋があった。
格子扉から、柔らかな優しい光が筋となって漏れている。
「おまえ、喫茶店でもバイトしてるって言ってたな」
「ええ、そうだけど」
早く自分でお店を持ちたいから、できるだけ貯金をしておきたい。
だからシトラスのバイトをかけもちしている。
「そこで出す定食、おまえが作ってるんだろ?」
私は泰兄を見上げた。
「この店がどんなものを出すか、よく見てみるといい。ここの店主は料理の味も盛りつけのセンスもかなりのものだ。勉強になる」
私に目を合わせることなくそう言うと、彼は引き戸を開け店の中に入ってゆく。
のれんが彼の背中を隠す。
泰兄…
私のためにわざわざここに…?
熱くなる胸に手をあてがう。
どうして?
どうしてあなたは、こんなにも私の心を奪うようなことをするの?
どうしてあなたに夢中にさせるようなことをするの?
他の人にも同じようなこと…するの?
それとも私にだけ?
もしそうだとしたら、少し期待してもいい?
気にかけてくれてるって、そう思ってもいい?
ねぇ、泰兄…
あなたの心の中が知りたい…