妖(あやかし)狩り・弐~右丸VSそはや丸~
---侍(さぶらい)でも捕まえてやろうか---

 時刻も時刻だし、ちょいと妖の力を見せれば、人など簡単に失神する。

---しかし、こんな時刻に詰めてる侍なんて、一人でいるもんかな---

 複数いると厄介だ。
 全員が気を失ってくれるとも思えない。
 人数が多ければ、恐怖心も薄れるからだ。

 渡殿に座り込んで考えていると、向こうのほうに、女官の姿を見つけた。
 女官は何か膳を持ち、ゆっくりとこちらに歩いてくる。
 少し手前でそはや丸に気づくと、びく、と足を止めた。

---こいつを使うか・・・・・・---

 蓮台野の屋敷まで、一人で来るような女だ。
 肝も据わっていよう。
 事情も、少しはわかっている。

 それに。
 そはや丸の目に、ほのかに凶悪な光が灯る。

 この生意気な女官が恐怖するかもしれない。
 それはそれで、面白い・・・・・・。

 じっと見つめるそはや丸の前で、女官は口を開いた。

「・・・・・・夜は冷えましょう。白酒をお持ちしました」

 やや強張った顔で、女官が言う。
 相変わらず座ったまま女官を見上げるそはや丸の横に酒の膳を置き、女官は、さっと裾を捌いて腰を下ろした。

「先程は失礼しました。こちらから無理を言ってお越し頂いたにも関わらず、確かにあなた様に言われるまで、名も名乗っていないことに気づきませんでした」

 一瞬真っ直ぐにそはや丸を見た後、女官はその場に手をつく。

「わたくしは多子様にお仕えしておりました、ほたると申します」
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