電網自衛隊
第4章 クラッシュ
 木曜日午後5時、都下の住宅地のとある家の中で、高校生の男の子と彼のガールフレンドがパソコンでオンラインゲームを楽しんでいた。だが、急に画面が乱れ切断されてしまった。ゲームの運営会社のサイトにアクセスしようとするが繋がらない。一部のSNSやツィッター、掲示板サイト以外にはアクセス出来なくなった。
「ねえ、これセキュリティソフト入れてる?」
 女の子の方が言う。男の子の方は意外そうな表情で答えた。
「あんな高い物買うわけねえじゃん。五千円もするんだぜ。おまえこそ、スマホにそんなソフト入れてるか?」
「いや、そりゃ入れてないけど。だけど、それはほら、あたしのスマホ、出たばっかりのピノキオがOSじゃない。あれに入れられるセキュリティソフトなんてまだ売ってないよ」
 彼らのパソコンもスマートフォーンも、その頃何者かに乗っ取られて信号を中継している無数の機器のうちだった。セキュリティソフトが入っていない、外部からのクラッキングに無防備な日本全国のパソコン、スマートフォーンがこの時一斉にある目的のために勝手に近くのインターネット網に接続し、ある指令を送り続けていた。
 インターネットで外出先から操作できる冷蔵庫、風呂の給湯機、エアコンなどの情報家電が首都圏全域で一斉に電源が入り、最大出力で稼働し始めた。それは不要な電力消費が突如発生した事であり、1時間後に帝都電力の最大電力供給能力を越えた。帝都電力の管轄下にある関東全域と静岡県の一部は、大停電に陥った。
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