無敵草食獣王子の憂鬱。真実の愛を繋ぐ強く堅い絆は風になって走ること。運命をかけたゴールはすぐそこだ!
 
 驚いて、騎手のリョウを振り落としかけ、まだレースの途中だったことを思い出した。


 地面に、右前足がつくたび、痛んだけれども、走れないほどじゃない。


 何しろ、ゴールは直前だし!


 勝たなけりゃ、コイツと離れ離れになるかもしれねぇ!


 そんな想いで、最後の数百メートルを駆け切った。


 そして。


 第四カーブまでの貯金を使い果たす、寸前。


 なんとか、ゴールに一着で飛び込むコトが出来たことは、出来たけれども。


 その時の俺は肩に翼の生えた馬……ペガサスなんかじゃなかった。


 背中に乗った騎手も『烈火』なんてもんじゃなかった。


 俺達は、風でもなく。


 ただの駄馬とデブの騎手が、よろよろと、ゴールにたどり着いた気分だった。





 






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