姫は救うと微笑み、神は殺すと無邪気に言った


「しませんよ、もう、ね」


「……」


言葉の意味を汲み取った茶神が口端を歪めた。


“全人類の毒”の名の通り、姫はその気になれば人々を根絶できる。


“人体”のワードが絡めばできないことがない術者。人体を壊すことも、または治すことさえできる。


人類の敵にして救済者だが、再三、人間を助けるようなことを言うからには今の姫は救済者になる。――そう、“今の姫は”だ。


「そうか、へえ。君でも全人類を殺したいと思うことがあるのか」


「殺したいではなく、それもまた救いたかったのですがね……。やったことは殺しに違いありませんでした。私のワガママがした愚行、一生をかけて償うべきことです」


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