姫は救うと微笑み、神は殺すと無邪気に言った
「確かに愚行だ。殺したら“もう楽しめない”じゃないか。万力のようにキリキリと、人を追い詰めて、その生死を手のひらで転がしてこそ、神たる僕らの娯楽だと言うのに」
「神ではありませんよ、私は」
「いいや、君は人間を超越している。君の力は神にも成り得るだろうに。壊し、救いと、その気になれば恐怖と崇拝で人々から奉られるだろうね」
「それでも、神にはなりませんよ。私は、人をこの手で救いますから。天の果てにいて、いつ救うかも分からない霞の存在ではなく、私はきちんとここにいます。
だから、この手で救うんです。できることを――人を救うのに限界があっても、私がすることは何一つ変わらないし、やるべきことも見えています」