無口な彼が残業する理由 新装版
エレベーターの扉が開いた。
中には上階の会社の女子社員がたくさん乗っている。
香水臭そうだなぁ。
私は携帯をいじるふりをして一度そのエレベーターを見送った。
普段なら気にならないが、今は堪えられそうにない。
「はぁ……」
春なのに、ちょっと寒いな。
なんだか息苦しい。
早く、帰りたい。
この体力で長風呂は無理だ。
明日の朝にシャワーで済ますことにして、すぐに眠りたい。
下から昇ってきたエレベーターがこのフロアに止まり、
下行きのランプが点滅した。
私の目の前で開く。
ふらり足を進めると、中から誰かが降りてきた。
軽く肩がぶつかる。
「ごめんなさ……」
シャツを腕捲りした丸山くんだった。
「……お疲れさま」
そう言ってエレベーターに乗り込もうとすると、
急にがっしり腕を捕まれた。
「どうした?」