無口な彼が残業する理由 新装版

「今は、ダメ」

丸山くんはキッパリとそう告げた。

「どうして?」

ムキになって言い返しても、

丸山くんはいつものポーカーフェイス。

「今ハッキリさせると、俺の夢が叶わないから」

「……は?」

つまり私は、邪魔だということ?

私への気持ちは丸山くんの夢を潰してしまう存在だってこと?

なんとも言えないモヤモヤが膨らんでゆく。

「でも」

丸山くんが私の手首を掴んだ。

「その間に青木に取られたりしたら困るから」

と言って、私の左耳の下に口付けた。

「ちょっ……!」

抵抗するにも手首を捕まれたままでは敵わない。

ビリッと軽い痛みが走り、

しばらくして解放される。

確認せずともわかる。

キスマークを付けたんだ。

「な、何するのよっ……」

目立たない場所かもしれないけれど、

誰かに見られたらどうするの?

丸山くんは私の力ない抗議なんて無視するようにベッドから降りると

伸びをしながら大きなあくびをした。

よく見ると、昨日と服が違う。

私が眠っている間に一度帰ったらしい。

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