無口な彼が残業する理由 新装版
広いオフィスに二人きり。
こんなシチュエーションなら、辛い残業も楽しくなる。
あと何時間でも頑張れる。
私は気合いを入れ直して資料とパソコンに向かった。
すると、
「なぁ」
丸山くんが私を呼んだ。
「えっ?」
体が敏感に反応する。
入社して5年。
同じ事業部になって1年。
丸山くんに声をかけられたことなんて一度もなかった。
「あんたさ」
まっすぐ私の顔を見て、
やっぱり短い言葉で一旦口を結ぶ。
その先が聞きたくて、
「なに?」
と急かしてみた。
出てきたのは、思ってもみない言葉だった。
「青木と付き合ってるの?」