無口な彼が残業する理由 新装版
……ドキドキして損した。
久しぶりに人を好きになって舞い上がっていたけれど、
丸山くんに変化はないだろうし
私に特別な興味を持ったわけではない。
共に残業をした同僚として、
ご挨拶程度のごく短い会話を催しただけのこと。
「そうだね、帰ろうかな」
私はまとめたデータを保存してパソコンを閉じた。
もう少しだけ頑張ろうと思っていたけれど、
帰れと言われてしまってはもう頑張れそうもない。
私は一旦伸びをして、バッグを取り出し肩にかける。
「それじゃ、お疲れさまー」
言いながら部屋を出ると、
「お疲れ」
背後で小さく聞こえた。