無口な彼が残業する理由 新装版
「それじゃあ、行ってきます」
ビシッと敬礼すると、二人も同じように敬礼を返してくれた。
ニコッと笑顔を見せて足を進める。
トイレから出る直前、
「神坂」
菊池さんが私を呼び止めた。
「今はどう思ってんの?」
丸山のこと。
と暗に言っているのはわかった。
私は愛華ちゃんが首を傾げたのを確認してから答えた。
「好きですよ。情けないくらいに」
私は事務所に戻り、課長の元へと急いだ。
課長は私を見るなり
「ケバッ」
と茶化して笑う。
「課長だって、いつもより派手なメガネじゃないですか」
対抗して、笑い合って、
少しだけ緊張が緩んだ。
「じゃあ、行くか」
「はい」