無口な彼が残業する理由 新装版
「今日はゆっくり寝て。明日、観光するんでしょ? 京都だっけ?」
「うん。でもそんな元気が残ってるか心配だよ」
「大丈夫。京都にパワーもらって来なよ」
丸山くんは、きっと気付いてない。
京都のどんなパワースポットなんかより、
丸山くんがパワーをくれることに。
こんなに疲れるってわかっていたら、観光なんて考えずに東京に帰っていたのに。
丸山くんのもとに、帰っていたのに。
そんなことを思った、その時だった。
「大地せんぱーい?」
電話越しに聞こえた、可愛らしい声。
癒されかけていた私の心に容赦なく切り掛かってきた。
わかっていた。
愛華ちゃんがいることも。
だけど、電話越しでもこんなにしっかり聞き取れるほど近くにいるなんて、
思ってもいなかった、というより
想像したくなかった。