無口な彼が残業する理由 新装版

「うん」

普段と変わらない涼しい声で、

普段と変わらない短い返事。

私がいくら心を燃え上がらせても、

500キロも離れた大阪からは伝わらない。

「じゃあ、またね」

これ以上話すと、私はきっとどんどん嫌な彼女になってしまう。

自覚できるくらい彼を責めたい衝動に駆られてしまっていた。

「ああ、また」

電話は呆気なく切断された。

丸山くんがああいう人で良かったかもしれない。

あっさり電話を切ってしまうような人で、

良かったかもしれない。

いつもは少し寂しいなと思っていたけれど、

今日はきっと、これ以上はダメだ。

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