無口な彼が残業する理由 新装版

「神坂さん」

丸山くんが遠慮がちに私を呼ぶ。

視線だけで応えると、

「怒ってる?」

と首を傾げる。

「怒ってない。怒ってないけど……」

「けど?」

一歩近づいてきた彼。

「腹が立つ」

丸山くんは足を止めた。

「怒ってるじゃん」

「違うの。丸山くんがここまでやってくれたことには感謝してるの。でも、ね」

言葉にしようと思うと、難しい。

だけど思ったまま伝えなくちゃ。

「なんだか私の企画、丸山くんに取られたみたい」

< 376 / 382 >

この作品をシェア

pagetop