無口な彼が残業する理由 新装版
「神坂さん」
丸山くんが遠慮がちに私を呼ぶ。
視線だけで応えると、
「怒ってる?」
と首を傾げる。
「怒ってない。怒ってないけど……」
「けど?」
一歩近づいてきた彼。
「腹が立つ」
丸山くんは足を止めた。
「怒ってるじゃん」
「違うの。丸山くんがここまでやってくれたことには感謝してるの。でも、ね」
言葉にしようと思うと、難しい。
だけど思ったまま伝えなくちゃ。
「なんだか私の企画、丸山くんに取られたみたい」