無口な彼が残業する理由 新装版
温かい手が再び私の頭に乗せられて、
伸ばしている髪を滑ってゆく。
そのまま手は私の頬に。
親指の動きからして、涙の跡に触れているようだ。
触れられることに少し慣れて鼓動が落ち着くと、
外で大雨が降っている音に気付く。
「私の企画なのに、頼っちゃって良いのかな」
丸山くんが軽く頷く。
「みんな自分の仕事があるのに、いいのかな」
再び、頷く。
「仕事は、一人でするもんじゃないよ」
丸山くんが穏やかな声で言う。
集団面接の彼の言葉を思い出した。
あんな人と一緒に仕事がしたいと思った。
「うん。そうだよね」
丸山くんはきっと、あの時の彼と同じスピリッツを持っているんだ。
頑張ろう。私。
諦めずに、やりきりたい。