無口な彼が残業する理由 新装版
「ごめんね、情けないとこばっか見せちゃって」
「別に」
「自分に実力が足りてないのはわかりきってるのに、なんだか悔しくて」
言い訳しながら笑って見せても
丸山くんはやっぱり無表情のまま。
「今の企画も、もう諦めちゃおうかなって何度も思ったの」
私が弱音を吐くと、丸山くんの表情が少しだけ変わった。
「諦めんな」
珍しく食い気味に、強く言葉を発した丸山くん。
「え?」
「諦めんな、絶対に」
そんな真剣な顔をされると、また涙腺が緩んでくる。
グッと堪えて微妙な表情の変化を探る。
「もっと頼れ」
「頼る?」
丸山くんは頷いて、
「俺とか、青木とか。あんたのこと応援してる人はたくさんいる」
そう言って再び私に腕を伸ばした。