無口な彼が残業する理由 新装版
私はイタズラ心に火がついて、
せっかくだから起こしてやろうと企む。
そおっと近付いて青木の背中を叩こうとしたとき、
振り上げていた私の腕を誰かに掴まれた。
驚いて掴んだ主を確認すると、
すこぶる不機嫌な顔をした丸山くんだ。
「え?」
相変わらず無表情ではあるが、
私には明らかに怒っているように感じた。
「ちょっと、いい?」
なんだか、怖い。
恐る恐る首を縦に振ると、
強引に腕を引かれて歩き出す。
何? 何なの?
どうしてそんな顔してるの?