無口な彼が残業する理由 新装版

それからも青木の態度はおかしくて、

ふとした時に髪を触ってきたり、

普段は一緒にコンビニ飯なのにランチに誘ってきたり、

昼時の満員寸前のエレベーターで腰を抱いてきたり。

向けられる視線がキラキラを通り越してギラギラしている。

今までそんなことしたことがなかったくせに、

女扱いをするようになった。

おかしい。

心配になった私は青木を倉庫に呼び出して

「青木、しっかりして! 目を覚まして!」

両手で軽くというには少し強く頬を叩いてみた。

だけど逆にその手を掴まれてグッと顔を寄せられる。

「キスしていい?」

「いいわけないでしょ?」

これはもう女扱いというより、

口説いている。


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