無口な彼が残業する理由 新装版
「もうっ! からかわないでよ!」
力一杯手を振りほどけば、
青木はその反応を予測していたかのように不適な笑みを見せた。
「からかってるわけじゃねーよ」
「じゃあ、何なのよ」
いつもと違う青木が一歩、また一歩と迫ってくるから、
私も少しずつ後退していく。
そしてついに壁に追いやられた。
長い腕で閉じ込められると、もう逃げ場はない。
そして倉庫には誰もいない。
「正直になることにしただけ」
「正直?」
「そう。鈍感なお前は全く気付いてないみたいだけど、俺、神坂のこと好きなんだよ」
はぁっ?
何なのこの急展開。
嘘か真かもわからないほど突然の告白。
本気だとも取れるし、冗談だよと笑われるような気もする。
「何言ってんの?」
青木は右手を私の左頬から耳を通して髪をかき上げた。
ゾクゾクするしドキドキする。