甘恋集め
私が住んでいるマンションは、お店から歩いて2分のところにある。

8階建てで、築6年ほど。

大学入学と同時に越してきて以来4年間住んでいる。

1LDKの間取りは、大学生の一人暮らしには十分な広さだと思うけれど、絵を描くスペースを確保すると、他の生活空間は否応なく窮屈なものとなる。

本来なら寝室に使うはずの部屋は、画材道具で溢れかえっていて、ベッドなんてものはなく、4年間で製作した作品達が並び、絵の具や絵筆が放り込まれたケースは足元に転がっている……。

ここはどこのアトリエ?

そう言えば格好いいけれど、簡単に言えば、物置き?

いやいや、私の大切なアトリエだ。
この8畳の部屋に籠って大学の課題を描いたり、学園祭前には友達と徹夜でポスターを作ったりした。

この4年間の宝物が溢れている部屋。

この部屋にいるだけで気持ちは落ち着いて、現実を忘れる事ができる大切な場所。

そんな部屋に溢れかえっている宝物の中でも、一番の宝物は、思い出の風景を絵にした一面の緑。

私の一番古い記憶は、単純に緑なんだ。

目を閉じて静かな気持ちで心の中に入っていくと、浮かんでくるのは単純な緑の風景。
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