甘恋集め
ゆっくりと竜の体と私の間にすきまを作って、じっとその泣き顔を見た。
「泣いてても、相変わらず男前だね。私の事、想って泣いてるの?」
わかりきってることなのに、聞いてしまう。
竜は、どれだけ悲しい思いを抱えて過ごしていたんだろう。
「梅、大丈夫か?俺がもう限界で、引っ越すはずだったあの家の前に連れて行ったから、つらい事思い出しただろ?……ごめん」
そんな竜なのに、私を気遣ってくれる。
出会ってからずっとそうだった。強気にふるまっているけれど、結局は私の事を一番に考えてくれて、大切にしてくれて。
「私も、きっと限界だったんだよ。竜との記憶を取り戻したくて仕方なかったんだよ……」
そうなんだ。私がここ最近ずっと、取りつかれたようにあの場所から緑の屋根を見続けていたのはきっと、限界を知らせるサインだったんだね。
どんなに忙しくても呼び寄せられるように駆け上がったあの坂道。
眼下に広がる風景に紛れている緑色に吸い寄せられるようにいつもいつも。
「あの緑いろの屋根、竜からのサインだった?」
建築士を目指す竜に、『いつか緑いろの屋根のおうちを建てて』ってそう言ったから。
「ああ、父さんと母さんに頼んで、屋根の色を塗り替えてもらった」