甘恋集め


お互いの気持ちが少し落ち着いた頃、ベンチに並んで座って、いつもの景色を見る。

たくさんの家が立ち並ぶ眼下の景色の中に目立っている緑色の屋根。

何も言わないけど、私も竜も自然とその屋根を見ているのがわかる。

「俺の事全部、記憶からすっぽり抜けてる梅を見た時、気が狂いそうでどうしようもなかった。
ずっと側にいるって約束して、結婚だって考えていたのに、突然俺の事忘れやがって、って本当、俺も記憶をなくしたかったよ」

繋いだ手にぎゅっと力が入って、竜の言葉も重い。……ごめん、私のせいだね。

私が勝手に記憶を捨てたから、竜の人生だって、おかしくなったに違いない。

「元気に笑ってるのに、その笑顔が俺に向けられる事はないんだ。

『すごくいい絵が描けた』って報告するのも俺じゃない。

本当に、つらかったし逃げたかった。いっそ、お互い他の相手を見つけるのもいいのかと、諦めそうにもなったけど、やっぱり、俺には梅しかいないんだ」







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