甘恋集め
「こうやって、頬に触れたりしたかったし、絵画コンクールで入賞した時には抱きしめて嬉しさを分かち合いたかった。同じ大学の男と仲良く飲んでる所に遭遇した時なんて思わずそのまま連れて帰ろうかとも思った」

「そんなの……全然気が付かなかった」

高校の卒業式やら大学生活の中での私の様子を気にかけながら、遠くから見てくれていた竜の存在に、全く気が付かなかった。

あんなに大好きで大好きで、竜がいない世界はありえないくらい大切な存在だったのに。

「私、ずっと忘れてて……ごめんね」

何度謝っても償いきれないこの4年が、次々と私の中に溢れてくる。

あの事件の後、私はその記憶を忘れてしまいたくて、関わってくる多くの事を忘れてしまった。

新しい家に引っ越す事がなければ、あんな怖い思いをしなくて済んだのに。

竜にしか見せた事も触れさせた事もない体を、突然侵入してきた男に触られる事もなかった。

そんな思いが、新しい家に関わる全ての記憶を封印させた。

設計段階から新居に携わってくれていた透子さんや竜の記憶まで。

私から消えてなくなったんだ。

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