甘恋集め
「そう。最近必要なかったから、部屋に用意してないんだ。これだけで足りる?」

「た、足りますっ」

「あ、そ。結花もその気だね。まあ、今日は一箱でいっか」

ポン、とカゴに入れたのは、まさしくそれで。

今晩私を抱くと宣言したようなもので。

避妊もちゃんとしてくれるって教えてくれたようなもので。

あ、私、それで足りるとか言っちゃったし。

その気だなんて言われた。

いろんな事があって混乱し続けた一日の終わりにまでも予想外の事が起こるなんて。

利也さんが私を求めてくれるのは、とても嬉しいけど、突然の展開に気持ちがついていけない。

初めての経験ではないけれど、付き合い初めた途端すぐに抱かれた事はなかったから、ちょっと迷ってしまう。

いいんだろうか、このまま利也さんに飛び込んでも。

好きだという気持ちには自信があるけれど、悩みの原点はそれとはまた違ってるし。

そんな私の葛藤に気付いたのか、



「結花の気持ちを無視して、無理矢理抱かないから、一緒にいて」



利也さんの声は甘い麻薬のようだった。

私は、そんな事言われて、拒めるわけがないじゃないかと、黙り込んだ。


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