コイン★悪い男の純情
 そこへ、勇太が帰って来た。


 「ただいま~ ママ、帰ったよ。あっ、お父ちゃん、何してんの」


 「勇太。助けて~」


 勇太はかんなの声を聞いて、咄嗟に手に持っている野球のバットで、前崎の尻を思い切り叩いた。




 バス~ン。




 「いたっ、何すんねん」



 バス~ン。



 「あほ! やめんかい」
 「どけ、どかんと叩くぞ」

 
 勇太は、前崎の頭を目掛けてバットを構えている。


 「わかった。わかった」


 かんなは、前崎がひるむ隙に素早く立ち上がった。そして、台所にある出刃包丁を、かんなは力強く握り締めた。






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