コイン★悪い男の純情
 結婚詐欺まがいの仕事まで正直に白状した淳也に、自分への愛と誠実さを、かんなは感じたからだ。

 
 「かんなさんは、前の亭主からレイプされそうになった、と言っていましたが、本当ですか」


 「ええ、本当よ。写真を見るための条件だったから、仕方なく前崎を家に入れたの。私が写真を見て呆然としていたものだから、前崎に押し倒されたの」


 「何も無かったですか」

 「危ない所で勇太が帰ってきて、私を助けてくれたの」
 「へえ、勇太君が」

 「そうよ。勇太ったら、前崎のお尻をバットで思い切り叩いたのよ。凄いでしょう」

 「勇太君が。見たかったな」

 
 「私が見たいのは、相手の女性よ。凄い美人なんでしょう」


 「まあ、そうかな」

 「私よりずっと若いみたいだし。私は美人じゃないし、おばんよ。それでもいいの」

 「美人でなくても、おばんでも、僕はかんなさんがいいんです」

 「まあ、淳也さんたら、憎らしい」

 淳也はやっとの事で、綻びを繕うことが出来た。



 (破ったら、死ぬからね)



 かんなが言ったこの言葉を、淳也は深く深く心に刻んだ。



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