コイン★悪い男の純情
 「俺や無い。殺したのは、あの運転手や。警察に車のナンバー連絡してあるから、すぐ捕まるわ。殺したんはあいつや」

 前崎が苦しい言い訳をした。



 「あんたや。あんたが馬鹿な事を考えんかったら、今でも勇太は生きてるわ。あんたや、あんたや、殺したんはあんたや。勇太を返せ!勇太を返せ!勇太を・・・」


 かんなは気が狂ったようになって、前崎の襟ぐりを掴んだ。



 「あんたや。あんたが殺したんや。う~うう~うう~うう~」


 「あほか。俺や無い。ええかげんにせんかい」

 前崎は、かんなの凄い剣幕にたじたじになっている。


 「あんたや。あんたや。あんたが殺したんや・・・ううう・・・」

 かんなは激しく泣いた。

 「俺は警察に事情を説明せんとあかんから、これで行くわ」

 「こらっ、逃げるのか。あんたが殺したんや。勇太を返せ」

 かんなは前崎の後姿を見送りながら、そこに泣き崩れた。


 「うううっうううっうううっ・・・」




 「勇太~ 勇太~ 勇太~ うううっ・・・」




 かんなは、肩をわなわなと震わせて号泣した。

 涙が、滝のように流れて滴り落ちた。







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