コイン★悪い男の純情
 かんなは勇太が死んで以来、仕事には出ていなかった。

 働く気力が無かった。
 生きる希望も無かった。

 かんなは一日中部屋に閉じこもっていた。
 
 焦点の定まらない目で、かんなはぼんやりとしていた。そして、時折、勇太の写真を眺めては

「勇太」
「勇太」

と、言ってめそめそと泣いていた。


 食事の用意は淳也がしていた。

 「体に悪いから食べて下さい」

 淳也が幾ら言っても、かんなは頷くだけ。

 3度の食事も、殆どかんなは手を付けていない。



 そんなある日、淳也は近くのスーパーに買い物に出掛けた。

 「かんなさんは何をすれば食べてくれるだろうか」

 あれこれ考えながら買い物をしていると、意外と時間が掛かってしまった。

 「あっ、いけない。もう、こんな時間だ」

 淳也はかんなを長い時間ひとりにはしたくなかったので、慌てて自転車で家に帰った。






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