コイン★悪い男の純情
 たえが亡くなり、最近、かんなはこの家にはご無沙汰していた。


 「今日は、綾瀬です」
 「あら、お久し振り」

 淳也の妹の智子が顔を出した。

 「母が生存中は随分とお世話になりました」

 「いいえ~。今日は智子さんにお聞きしたい事があってお伺いしました」

 「あら、何かしら」


 「淳也さんの住所ご存知ないですか」


 「兄さん、かんなさんの家を出たの。少しも知らなかったわ」
 「智子さんもご存知では無かったですか」

 「ええ、聞いていないけど。兄さん、なぜかんなさんの家を出たの」

 「私が勇太を亡くして、ずっと落ち込んでいましたから、ついつい淳也さんに当たったもんで」

 「子供を亡くせば、無理ないわねえ」

 「智子さん、ありがとうございます。また別の所を当たってみます」
 「兄さんの住所がわかれば、私にも教えてね」

 「はい、わかりました。では、智子さん失礼します」

 「元気でね。さようなら、かんなさん」
 「さようなら」


 かんなは、自宅を目指して自転車のペダルを漕いでいた。




 
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