コイン★悪い男の純情
 「あっ!!! 」


 かんなは部屋を見て、ただただ呆然とした。

  部屋中には、おむつとパットと柔らかい便と、ティシュと着替えと座布団と新聞・・・とが、あちこちに散乱していた。それも、おしっこにぐちょぐちょに濡れた畳の上に。

 おしっこのアンモニアの臭いプラス、大便のあの臭い。イコール、異様な臭いが部屋中を占領していた。

 たえは、なぜかベッドから落っこちて、ベッドにもたれてて座っていた。

 左手は便にまみれ、着衣にも至る所に便がべたりと付いている。


 何と、顔にまで便がべちょ~と。


 たえは赤子のように、わあん、わあ~んと泣いていた。



 「死に たい わ~ 死に たい わ~ 。後生 だから、殺して おく れ」



 「大丈夫よ。大丈夫だからね。いま、いい空気を入れて上げるからね」

 かんなは急いで窓ガラスを開けた。庭からさわやかな風が入って来た。

 「ちょっと、待ってね」

 かんなは急いで自転車の荷台から非常用具を取り出した。


 それは、あるおばあちゃん宅での事。

 絨毯から床まで糞尿まみれの中で悪戦苦闘した時、自分の足や体中が便だらけに。そんな苦い経験から、古い雨靴と制服、ゴム手袋を荷台に常備するようになったのだ。

 「これで良し」

 玄関で非常用に着替えると、かんなは大急ぎで、異臭が蔓延する部屋に戻った。



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