コイン★悪い男の純情
 「待ってね。まず、ここを片付けてしまうわね。それから、綺麗にしてあげるから。吉見さん、それまで待てる?」

 「う ん・・・」

 たえがこっくりと頷いた。

 「あっ、その前に顔と手のウンチだけ、ざっと拭いておこうか」

 かんなは便と尿まみれの中を雨靴で、ざくっざくっとたえの所まで歩いて行った。

 「雨靴に履き替えてよかったな。大胆に行動出来るわ」

 かんなはタンスの上から予備のティシュペーパーの箱を取り出すと、箱の上をバリバリ~と開けた。

 「吉見さん、なぜ顔にウンチを付けているの」
 「・・・」

 「これで、綺麗になったわ。後で、ウエットティシュで拭いて上げるからね。次は、手を出してくれる」

 かんながたえの手の便を拭っていると、そこへ淳也がぬっと現れた。


 「くさいな~。たまらんわ。しかし、ひどい臭いだなあ。いったい、お袋、どうしたんだい」


 「ああ、 淳也 かい」


 わあ~ん、わあ~ん。


 「死に たい わ~」


 「死なして~」


 たえが淳也の顔をみると、またべそをかき出した。

 「何が、あったの」


 わあ~ん、わあ~ん。


 「泣いているばかりじゃ、何もわからないじゃないか」
 「息子さんですか。はじめまして、かんなです。今は、そっとして上げて下さい」

 「はじめまして。お世話になります。淳也です。了解しました」
 「それより、手伝ってもらっていいですか」

 「わかりました。何をすればいいですか」

 「その格好では何ですから、まず汚れてもいいものに着替えてもらいますか」
 「了解です」

 淳也はかんなの姿をじっと見詰めた。

 
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