コイン★悪い男の純情
 「お待たせしました」
 「助かったわ。あらっ、いやだ。顔にまで付いているわ」
 「何が・・・」

 かんなはポケットティシュで淳也の顔を拭いてやった。

 「はい、これっ。ハンサムな顔が台無しですよ」

 かんなが便を拭ったティシュを淳也に渡した。
 淳也がティシュを広げて中を見た。

 「急いで洗ったから、雨靴の便が飛び散ったかな。これで、ウンが付くかも」
 「どんな運が付くの」

 「ウンがとりもつ縁で、天使のように優しい人にめぐり逢えたし・・・」

 「優しい人って私のこと。淳也さんだって優しいじゃないの。感動もんよ・・・。ああ、残念。もういけないわ。この続きは、またね。じゃ、失礼しま~す」

 「かんなさん、本当にお世話になりました」
 かんなは全速力で自転車のペダルを漕ぎ出した。

 淳也は直角にお辞儀をし、うしろ姿が見えなくなるまでいつまでもかんなを見送っていた。

 「それにしても、優しい人だな」

 淳也はかんなのケタ違いの優しさに心を打たれていた。


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