コイン★悪い男の純情
 「淳也さん、吉見さんをベッドに寝かせたいの。また、手伝ってもらえるかな」
 「心から了解で~す」

 「よいしょ」
 二人は力を合わせてたえをベッドに寝かせた。

 「これでOKね」
 そう言いながら、かんなが腕時計を見た。

 「あっ、いけない。予定より5分オーバーしているわ。失礼しなくちゃ」
 「もう帰るんですか」

 「ごめんなさい。次の仕事が待っているので。淳也さん、もしよかったら、仕上げをして下さる」
 「特別サービスの了解です」

 「ベッドに吉見さんがもたれていたので、便が付いていると思うの。まず、それを片付けて」
 「了解です」

 「畳は先程ざっと拭き上げているから、もう一度丹念に拭き上げて欲しいの。とりわけ、吉見さんが座っていた所、おむつを替えた所は入念に」
 「了解の了解です」

 「ゴミ、バケツ、雑巾、タオルなどの後始末をお願いね。あと、換気は良くしてね。扇風機があれば畳をそれで乾かして欲しいの。そんなもんかな」
 「名残惜しい了解です」

 「まあ、淳也さんったら・・・。吉見さん、さようなら」

 「ご 苦労 さん。ありが とう。世話掛けて 許してな」
 たえはそう言って、また片手でかんなを拝んでいる。

 「また、来るからね」
 「かんなさん、玄関で着替えて下さい。僕、その間に、雨靴とゴム手袋を水でざあと洗って置きますから」

 「悪いわ」
 「水で流すだけですから、すぐ終わります」

 「じゃ、甘えようかしら」
 「嬉しい了解です」
 「まあ、淳也さんたら」

 淳也は急いで水で洗おうと思って、それらを見た。

 「雨靴も、ゴム手袋も、便だらけじゃないか」
 淳也は雨靴とゴム手袋に向かって頭を下げた。

 「感謝の限りです」
 淳也は心を込めてそれらを水で洗った。

 
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