コイン★悪い男の純情
6話 お袋
 淳也はかんなの言った事を守り、ベッドの便を落とし、畳を丹念に拭き上げ、後片付けを済ませ、扇風機で畳を乾燥させた。

 「これで良し。かんなさん、上首尾でしょう」

 かんなさんと、名前を口に出すだけで、淳也は今までに無く心がキュンとなった。

 「お袋、綺麗になっただろう。良かったね」
 「あり が とう」

 「智子はどうしたんだい」
 「外出 や」

 たえは淳也の妹の智子の家族と同居していた。

 「お袋、なぜ、ベッドから落ちたんだ」
 「お むつ が 外れ て、左 手で 直そう と したら、落ち て し も てん」

 「なぜ、こんな状態に」
 「便が 出 たん や」

 「下でか」
 「そ や」
 「それで、こんなに散らかしたんか」

 「情け のう て、情け のう て・・・」
 「そうだったか」

 「そし たら 何が 何やら わか ろう なっ て しもう てな」
 「大変だったな」


 「淳也 。 頼み 事 が あるん や。聞いて くれ るか」
 「俺に何がして欲しいのだ」


 「お ね が い や。私 を 殺し て くれ へん か」


 「えっ!!!お袋を殺す。お袋・・・」


 「そんな悲しい事を・・・」

 淳也は母親の苦しみを知って、たまらなくなり、号泣した。

 
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