コイン★悪い男の純情
7話 妹
 電車が梅田駅に着いた。
 純一は淳也から、以前の名前に戻った。
 母親のたえは、純一の顔を見たせいか、あれ以来驚くほど元気になり、純一を何度も笑わせるほど明るくなっていた。

(かんなさんのお陰だ。また、会って感謝を言いたい)
 純一はかんなの顔を思い描き、頭を下げた。

 マンションに帰った。

 
 純一は次の獲物の情報を頭に叩き込むために、パソコンのスイッチを入れた。
 DUCK LISTを開く。



 森下 芳恵
 年齢 31歳
 身長 160センチ
 体重 55キロ?

 職業 医師

 年収 1000万円
 
 住所 枚方市・・・
 家族 父、母、妹の4人暮らし
 国立大卒

 趣味 映画
 性格 のんびり 明るい
 結婚歴 無し
 携帯 電話番号 090 ・・・・ ・・・・


 純一はDUCK LISTの情報を頭に刻み込んだ。

 初めての出会いから、2週間ほどが過ぎている。
 芳恵は待ちくたびれて、あきらめかけている頃だろう。

 「そろそろいいだろう」

 デスクのパソコンの横には、中ジョッキの瓶の中に100円玉が4分の1位入っている。

 公衆電話用に用意しているコインだ。

 純一はその中の一枚を天井すぐ近くまで放り上げた。そして、落ちてくる100円玉を素早く右手で掴むと、それを左手の甲の上に置いた。



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