コイン★悪い男の純情
 倒れる淳也のみぞおち辺りを、前崎は右足の靴の先で力任せに蹴り上げた。



 「うっううっ~」



 淳也は余りの痛みに悶えた。

 さらなる、前崎の蹴りが今度は顔面を狙っている。
 その前に、淳也は顔面と頭を咄嗟に両腕でガードした。



 ブシッ~。



 蹴りの鈍い音がした。

 「うううっ~」
 「止めて~。止めないと、警察を呼ぶわよ」

 かんなは携帯電話を今にも警察に掛けるしぐさを見せながら、大声を上げた。

 「畜生!意気地のねえ野郎だ」

 前崎は警察という言葉に反応したのか、淳也を蹴るのを止めた。

 「母親なら、少しは勇太の事を考えろ!」

 捨て台詞を残して、前崎は去って行った。

 「淳也さん、大丈夫。まあ、ひどい怪我だわ」
 「僕なら、だい、大丈夫です」

 「家に入って手当てをしなくちゃ」
 「大丈夫です。これで、帰ります」

 「駄目よ。手当てをしなくちゃ。私のためにこんなになったのに。私に手当てをさせて」
 「すみません」


 かんなは勇太を背負い、301号室の自分の部屋に淳也を連れて行った。

 
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